失敗は、だいたい決まった形をしています。兆候・原因・回避策の3点セットで10パターン。売り込みでは語られないところまで、正直に書きました。先に知っておけば、ほとんどは避けられます。
ロボット導入の失敗は、期待値の間違いと順番の飛ばしという2つの原因から枝分かれします。機種選びが原因で失敗することは、実は多くありません。今はできない作業に期待する、実現度の確認とPoCを飛ばして買う、現場条件を実測しない、運用の担当を決めない。この4つを避けるだけで、以下の10パターンの大半は起きません。
いま社内で起きていることが、右の「兆候」に当てはまるかを見てください。当てはまるなら、その行はまだ手を打てる段階です。
| # | 失敗パターン | 兆候(この言葉が出たら注意) |
|---|---|---|
| 1 | ×・△の作業に期待した | 「AIなんだから、そのうち覚えるでしょう」 |
| 2 | KPIを決めずに始めた | 「まずは動かしてみて、様子を見ましょう」 |
| 3 | 話題性で機種を決めた | 「人型のほうが取材に来てもらえます」 |
| 4 | いきなり購入した | 「レンタルは割高なので、買ったほうが得です」 |
| 5 | 補助金ありきで選んだ | 「対象製品の中から選べば安く入ります」 |
| 6 | 現場条件を見落とした | 「図面上は通るので大丈夫です」 |
| 7 | 二次開発できないエディションを買った | 「同じ機種なので、安いほうで十分です」 |
| 8 | 保守の到達時間を見なかった | 「壊れたら送って直してもらいましょう」 |
| 9 | 運用の担当を決めなかった | 「みんなで使えばいいと思います」 |
| 10 | 1台目の成功を急いで多拠点展開した | 「本社で回ったので、全店に入れましょう」 |
兆候/「AIなんだから、そのうち覚えるでしょう」という言葉が出る。実現度を確かめないまま予算が組まれている。
原因/展示会やニュースで見た動きを、自社の現場で毎日再現できると考えてしまう。デモは条件を整えた環境で撮られています。
回避策/対象作業をできる/できない一覧の◎○△×に当ててから予算化する。介護の移乗・入浴・排泄の介助、複雑な調理と接客判断、侵入者の確保・制圧は×。多品種の器用な把持、柔軟物の掴み分けは△です[4]。
兆候/「まずは動かしてみて、様子を見ましょう」。導入前の作業時間を誰も測っていない。
原因/機体が来ることが目的化し、比べる相手(導入前の数字)を用意し忘れる。
回避策/作業時間・必要な人手・ミスの件数・現場の受け入れの4つを決め、機体が来る前に導入前の値を3日分測る。手順はPoCの進め方に。
兆候/「人型のほうが取材に来てもらえます」。目的が人手削減なのに、選定理由が見た目になっている。
原因/集客・PRの目的と、省力化の目的が同じ会議で混ざっている。
回避策/目的を先に1つに決める。Listerの調査では実運用に至った比率はヒューマノイド16.7%、四足歩行11.1%に対し、医療・介護ロボット94.4%、無人フォークリフト83.3%です[1]。集客が目的ならヒューマノイドは今日でも成立しますが、省力化が目的なら定型・反復・閉鎖環境の作業から入ってください。
兆候/「レンタルは割高なので、買ったほうが得です」。現場を見ずに見積が出ている。
原因/稼働が計画どおりに埋まる前提で損益分岐を計算している。実際には段差・通信・充電で稼働が削られます。
回避策/購入前にレンタルで試す。小型二足なら機体のみ1泊2日で税別5万2千円〜、1か月60万円〜(機体のみプランの場合、別途おおむね梱包配送3万円・保険3万円・設置レクチャー3万円/日)[4]。数百万円の機体を現場で止めるより、この費用で見極めるほうが安くつきます。金額は時点の目安です。
兆候/「対象製品の中から選べば安く入ります」。課題より先に制度名が出てくる。
原因/補助率と上限額の魅力が、目的の検討を飛ばしてしまう。
回避策/課題から機種を決め、そこに使える制度を当てる。中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型は補助率1/2以下で、上限は従業員数によって変わります(金額と要件の一覧は補助金で導入するへ)[3]。中古品は対象外です。レンタルは対象外のことが多く、採択も保証されません。不採択でも回る資金計画を同時に作ってください。詳しくは補助金で導入するへ。
兆候/「図面上は通るので大丈夫です」。段差や通路幅の実測値が誰も言えない。
原因/図面と現場は違います。棚や台車が置かれ、通路は図面より狭いのが普通です。
回避策/段差・通路幅・床・通信・充電・騒音・エレベーター・人の動線の8項目をメジャーで実測する。チェックリストは導入ガイドに置きました。搬送系は段差に弱く、わずかな段差でも止まることがあります。
兆候/「同じ機種なので、安いほうで十分です」。将来やりたいことを決めずに型番だけ比べている。
原因/同じ機種名でもエディションで制御の可否が分かれることが、カタログでは目立ちません。
回避策/購入前に「自社でプログラム制御するか」を決める。四足も小型二足も安い側のエディションは二次開発ができず、上位版でしか自社システムから動かせません。型番ごとの可否と価格は選び方のエディション比較表に一覧にしました[4]。ここを間違えると、買ってから作り直しになります。
兆候/「壊れたら送って直してもらいましょう」。代替機や消耗品の話が見積に出てこない。
原因/導入時の価格だけで比べ、止まった日のことを計算に入れていない。
回避策/故障時に何日で駆けつけられるか、代替機はあるか、バッテリーなど消耗品は国内で手に入るかを、契約前に文章で確認する。拠点が都市部から離れるほど、この差が効いてきます。
兆候/「みんなで使えばいいと思います」。操作できるのが1人しかいない。現場から「仕事が増えた」と言われる。
原因/機体は買えば届きますが、毎日の充電・点検・異常対応は人の仕事として残ります。ここを誰の担当にするか決めないと、忙しい人に押し付けられて止まります。
回避策/電源を入れる人、充電する人、異常に気づく人、記録する人を名前で決める。対象作業は現場に選んでもらい、PoCの測定も現場の人が行う。人員削減の文脈ではなく、危険・重量・深夜など、その人がやりたくない作業から始めると受け入れが変わります。
兆候/「本社で回ったので、全店に入れましょう」。2拠点目の現場条件を誰も測っていない。
原因/機体は同じでも、段差・通路幅・通信・エレベーター・人の動線は拠点ごとに違います。
回避策/拠点ごとに8項目を測り直し、1拠点ずつ広げる。Listerの調査では、2件以上導入した組織は68/493(13.8%)、複数拠点・全社規模に至ったのは35件(5.9%)[1]。横展開は、ほとんどの組織がまだ越えられていない壁です。
10のパターンのうち、もっとも取り返しがつかないのが1番です。できない作業は、順番を守っても、予算を積んでも、今はできません。当サイトの能力DBで×としているのは、介護の移乗・入浴・排泄の介助、複雑な調理と接客判断、レジ・会計の代行、侵入者の確保・制圧、除雪や重量施工、汎用の施工自動化、悪天候・強風下の飛行です。
△(研究段階・デモ止まり)は、多品種の器用な把持、柔軟物・不定形物の掴み分け、多品種の陳列、調理補助、繊細な収穫・選果、墨出し・資材搬送、屋内ドローンによる点検[4]。ここは「もうすぐできる」と言われ続けている領域で、PoCの対象にすると費用と時間を失います。
逆に、◎(実用)はすでに毎日動いています。倉庫の水平搬送、夜間の屋外巡回、配膳・下げ膳、ドローンによる高所点検・測量・農薬散布、外観検査。まずここから入るのが、失敗しないいちばん確実な道です。判断に迷ったら選び方の5軸とできる/できない一覧を先に見てください。
失敗のいちばん多い原因は何ですか。
期待値と順番の2つです。今はできない作業(×)や研究段階の作業(△)に期待するか、実現度の確認とPoCを飛ばして買うか。10のパターンは、ほとんどがこのどちらかから枝分かれしています。機種選びが原因で失敗することは、実は多くありません。
ヒューマノイドを入れれば人手不足は解決しますか。
現時点では解決しません。Listerが国内595件を分析した調査では、実運用に至った比率はヒューマノイドで16.7%、四足歩行で11.1%です。一方、医療・介護ロボットは94.4%、無人フォークリフトは83.3%。人手削減が目的なら、まず定型・反復・閉鎖環境の作業から入るのが確実です。
安いエディションを買って、あとから拡張できませんか。
エディションによっては後から拡張できません。四足ロボットのAir・Proは二次開発ができず、自社でプログラム制御する予定があるならX以上が必要です。小型二足も通常版は開発不可で、R&D版が必要です。買ってから作り直しになる典型なので、購入前に開発の要否を必ず決めてください。
補助金が採択されたら導入する、という進め方は駄目ですか。
順番が逆です。補助金に合わせて機種を決めると目的からずれます。また設備投資が対象のためレンタルは対象外のことが多く、採択も保証されません。課題から機種を決め、そこに使える制度を当て、不採択でも回る資金計画を同時に作ってください。
1台目が成功したので、他の拠点にも一気に広げたいのですが。
拠点ごとに現場条件を測り直してください。Listerの調査では、2件以上導入した組織は68/493(13.8%)、複数拠点・全社規模は35件(5.9%)にとどまります。段差・通路幅・通信・エレベーターは拠点ごとに違い、1拠点で回った運用がそのまま移植できるとは限りません。
現場が使いたがりません。どうすればいいですか。
決め方を戻してください。対象作業を現場に選んでもらい、PoCの測定も現場の人が行う形にすると、受け入れは大きく変わります。人員削減の文脈で説明すると必ず抵抗が出るため、危険・重量・深夜など、その人がやりたくない作業から始めるのが近道です。
導入を頼む相手は、どこを見て選べばいいですか。
できないことを言うかどうかです。あわせて、故障時に何日で駆けつけられるか(保守の到達時間)、代替機の有無、消耗品の供給、そして概算ではない実額を出せるかを確認してください。関東経済産業局も、中堅・中小企業が独力でロボットを導入することは困難であり支援機関の助けが必要としています。
失敗しないために、最低限やることは何ですか。
3つです。対象作業の実現度を◎○△×で確認する、現場条件8項目を実測する、購入前にレンタルで試す。この3つを守るだけで、ここに挙げた失敗の大半は起きません。
課題の棚卸しから実現度の確認、現場条件の実測、レンタルでの検証まで、10パターンを避ける順番で伴走します。できないことは、できないとお伝えします。相談は無料です。