Government / Infrastructure

自治体・インフラの
フィジカルAI導入

人工知能基本計画は「公共性の観点から、医療・介護、福祉、農林水産業、社会インフラなどで社会課題の解決につながるAI利活用を推進する」とし、地方自治体についても「積極的にAIを導入できる環境を整備する」としています[1]。現場でいま動くのは点検・巡回・調査です。

インフラ点検は実用 国交省の重点分野に対応 できない作業も明記
まず結論

自治体のフィジカルAIは、いま「点検・巡回・調査」が実用段階です。

ドローンによる橋梁・のり面・施設の点検、四足ロボットによるトンネル・管路・狭所の点検公共施設の警備・巡回はいずれも◎実用。災害・危険地帯の遠隔調査は○条件付きで通信環境と天候に依存します。除雪・道路工事・重量施工は×、専用重機と人の領域です。可否を分けるのは、通信・住民周知・誰が動かすかの3点です。

01 / Working now

自治体の現場で、いま実際に動いている作業

能力DBで自治体・インフラに◎(実用)が付く作業は3つ、全業種でも多いほうです。橋梁・のり面・施設の点検(産業用ドローン)、トンネル・管路・狭所の点検(四足ロボット)、公共施設の警備・巡回(四足+遠隔監視)。危険な場所・高所・広範囲という自治体の点検業務は、フィジカルAIが得意な条件と重なります。

ただし数字は冷静に見てください。国内595件の分析では、設備点検は事例数89件と最多クラスなのに実運用比率は37.1%でした[5]。「実証はしたが運用に載らなかった」が最も起きやすい領域です。原因の多くは機体ではなく、撮ったデータを誰がいつ判読し次年度以降どう続けるかを決めていないことにあります。

運用まで届く自治体の共通点

  • 点検の対象と頻度が既に決まっている業務から始めている
  • 撮影データの保管場所・判読の担当・報告書への落とし方が決まっている
  • 職員が操作するのか委託するのかを、調達の前に決めている
02 / Conditional

条件付きでできる作業(○)

災害・危険地帯の遠隔調査(四足 / ドローン)

能力DBの条件は「通信環境・天候に依存」。災害対応では、次の4点を決めておかないと当日動きません。

  • 通信:発災直後は輻輳や停波が起こります。圏外でも記録できる運用と予備電源を決めておく
  • 天候・時間:夜間・降雨・強風では飛べない。飛べない時間に何をするかも計画に含める
  • 要員:機体と操縦できる人をどこに常備するか。職員か、協定先の事業者か
  • 判読:撮った映像を誰が、どれくらいで読み、どこへ報告するか

国土交通省の重点8分野にも(7)災害調査と(8)災害復旧が入り[2]、「AIロボティクス戦略」の18分野にも災害対応が含まれます[3]。残るのは、各自治体で誰が飛ばすかを決める作業です。

03 / Not yet

まだできない・期待してはいけない作業

除雪・道路工事・重量施工(× 今はできない)

除雪、舗装、土砂の撤去は専用重機とオペレーターの領域です。要求される出力・重量・安全の水準が、流通しているロボットとは桁違いです。

紛らわしいのは、国土交通省の重点8分野に(6)除草、除雪、清掃が入っていることです[2]。ただしこれはこれから取り組む分野という意味で、いま調達できる製品があるわけではありません。国の資料自身が「今後設置予定のコンソーシアムにおいて各分野の進め方を具体的に検討」としています[2]。

窓口の複雑な相談対応

受付・案内は小型のコミュニケーションロボで条件付き可(○)ですが、相談を聞き取って制度につなぐ判断は人の領域です。ロビーの案内と窓口業務は分けて考えます。

重点分野に載っていること=いま買える製品があること、ではありません。提案を受けたら、その作業が能力DBのどの実現度にあたるかを分解して確認してください。◎と△が同じ資料に並んでいることがあります。

04 / Capability Matrix

作業×実現度の一覧(自治体・インフラ)

能力DBの自治体・インフラの全行です。◎実用/○条件付き可/△研究段階/×今はできない。

フィジャーズ能力DB(2026-09-15時点)。実現度は現場条件・時点で変わります。
作業機種実現度条件手配
橋梁・のり面・施設の点検産業用ドローン◎ 実用飛行許可・立入管理弊社手配
トンネル・管路・狭所の点検四足 / Unitree Go2◎ 実用通信・回収手段の確保開拓中
公共施設の警備・巡回四足 + 遠隔監視◎ 実用経路設定・夜間対応開拓中
災害・危険地帯の遠隔調査四足 / ドローン○ 条件付通信環境・天候に依存開拓中
除雪・道路工事・重量施工× 不可専用重機・人の領域

全業種の一覧はできる/できない一覧へ。発注者・受注者の両面で近いのは建設警備・点検です。

05 / Government policy

政府方針との接点(インフラ保守・災害対応)

自治体の所管業務は、国の重点分野とほぼ一対一で対応します。

分野名は国土交通省[2]および内閣官房「AIロボティクス戦略」[3]、実現度はフィジャーズ能力DBの対応する作業から。
国の分野自治体の業務の例いまの実現度
構造物点検
国交省 重点8分野(4)
橋梁・トンネル・のり面・上下水道施設の点検◎ 実用
巡視・点検
同(5)
河川巡視・道路巡視・公園施設の点検◎ 実用
除草、除雪、清掃
同(6)
道路除草・除雪・公共施設の清掃× 専用重機の領域
災害調査
同(7)
被災状況の広域調査・詳細調査○ 通信・天候に依存
災害復旧
同(8)
土砂撤去・整地・道路啓開× 人と重機の領域
インフラ保守
AIロボティクス戦略 18分野
公共インフラの維持管理全般◎/○
災害対応
同 18分野
防災・消防の現場把握○ 条件付
警察活動
同 18分野
警戒・巡回(制圧はしません)○ 条件付

「AIロボティクス戦略」(令和8年3月26日決定)は18分野にインフラ保守・災害対応・警察活動・廃棄物処理業を含め、「2040年までに1,000万台規模のAIロボットを国内導入」を目標に掲げます[3]。国土交通省の中間とりまとめ(令和8年8月26日策定・9月4日公表)はこれを建設・土木の側から具体化したもので、維持管理と災害対応の5分野がそのまま自治体の日常業務にあたります[2]。人工知能基本計画も「特にバーティカルAI及びフィジカルAIを行政及び産業の現場に能動的に導入する」「防衛、サイバーセキュリティ、防災、消防及び警察でのAI利活用を戦略的に進める」としています[1]。庁内の説明資料は、この一文と上の表を並べるのが早道です。

06 / Categories

自治体に向いている機種と代表機種

仕様書を書く前に切り分ける2点

1つめは「非中国製」の要件です。「中国製は使えない」という条件がある案件では、ACSL SOTENのような国産機であること自体が要件を満たす根拠になります。ただし民生の汎用機より本体価格は上がります。要件が本当に「非中国製」なのか「特定の機能」なのかを先に切り分けると、選択肢と費用が大きく変わります。

2つめは四足のエディションです。Unitree Go2はAirとProで二次開発(プログラム制御)ができません。自動巡回や庁内システムへの取り込みを仕様に書くならX以上が前提です。機種一覧は機種から探す、選ぶ順序は選び方へ。

07 / Cost & Procurement

費用の目安と、調達・実証の組み立て方

価格表で確認できている実額だけを載せます。点検・測量の役務は要見積です。

販売は2025年10月6日改定の価格表、レンタルは2026年6〜7月時点の供給元提示額(下限の目安)。国産セキュアドローンは代理店経由の手配で価格は個別見積。在庫は非公開・都度確認。
機種・形態価格(税別)備考
Unitree Go2 Air(販売)528,000円二次開発は不可
Unitree Go2 Pro(販売)678,000円二次開発は不可
Unitree Go2 X(販売)998,000円X以上が二次開発に対応
Go2 Pro オペレーター同行デモ150,000円 / 日1施設・1路線での実証用
ドローン点検・測量の役務要見積対象・面積・精度要求で変動

補助金より、実証と仕様書の順序

本サイトで扱う補助金は中小企業向けが中心で、自治体そのものは対象外のことが多いのが実情です。地域の事業者に委託する場合は、その事業者の設備投資として中小企業省力化投資補助金(補助率1/2以下、カタログ登録製品、中古品は対象外、3年で労働生産性年平均3.0%以上の計画)が候補です[4]。レンタルは対象外が多く、採択は保証されません。

自治体側で効くのは、補助金より実証と仕様書の順序です。単年度予算と入札で難しいのは「何ができるか」を仕様に書き切れないこと。先に1施設・1路線で実証して実額・所要時間・見つかった損傷を数字にしてから仕様に落とすと、要求水準が現実に合い、応札者にも伝わります。関東経済産業局の基本フロー(事前検討・調査、要件確認、要件定義・仕様検討、機器・システム提案、導入、運用・改善・保守)は、仕様書づくりにそのまま使えます[6]。制度は補助金で導入へ。

08 / How to start

自治体での導入の進め方

民間と違うのは調達手続き・住民説明・通信環境の3点。ここを先に潰す順序で進めます。

1

所管課の1業務に絞る

道路・河川・公園・上下水道・施設管理のどれか1つ。対象と頻度が既に決まっている業務なら、効果を数字で比べられます。

既にある業務から
2

通信環境を先に実測する

山間部・トンネル・地下施設は圏外になります。中継を置くか記録式に切り替えるかを、機種選定より先に決めます。

圏外は設計で回避
3

住民への周知と撮影の扱いを決める

飛行の周知方法、撮影範囲、映像の保管期間と個人情報の扱い、苦情の受け付け先。後から決めると止まります。

先に決めておく
4

1施設・1路線で実証して数字を取る

実額・所要時間・見つかった損傷を記録して仕様書に落とします。やり方はPoCの進め方に。

実証が仕様書になる
5

誰が動かすかを決めてから調達する

職員が操作するのか委託するのかで、要員・研修・保守の条件が変わります。曖昧なまま買うと置き場所だけが残ります。

要員が先、機体は後

つまずき方は失敗パターン、全体像は導入ガイドへ。

FAQ

よくある質問

自治体でフィジカルAIは何に使えますか?

点検・巡回・調査です。ドローンによる橋梁・のり面・施設の点検、四足ロボットによるトンネル・管路・狭所の点検、公共施設の警備・巡回はいずれも実用段階(◎)。災害・危険地帯の遠隔調査は条件付き可(○)です。

国の方針で自治体はどう位置づけられていますか?

人工知能基本計画は「公共性の観点から、医療・介護、福祉、農林水産業、社会インフラなどで社会課題の解決につながるAI利活用を推進する」とし、地方自治体についても「積極的にAIを導入できる環境を整備する」としています。

災害のときに使えますか?

条件付きで使えます。ただし発災直後は通信が不安定になり、夜間や降雨では飛べません。機体と操縦できる人をどこに常備し、撮ったデータを誰がいつ判読するかまで決めておかないと当日は動きません。

除雪や道路工事はできますか?

できません(×)。除雪・舗装・重量施工は専用重機とオペレーターの領域です。国土交通省の重点8分野に「除草、除雪、清掃」は入っていますが、それは今後取り組む分野であって、いま調達できる製品があるという意味ではありません。

中国製のドローンは使えないと言われました。

「国産機であること」自体が要件を満たす根拠になる案件があります。ACSL SOTEN(蒼天)は防衛装備庁・航空自衛隊への納入実績があり、仕様書の要求に説明しやすい機種です。ただし民生の汎用機より本体価格は上がるため、要件が「非中国製」なのか「特定の機能」なのかを先に切り分けてください。

予算はどのくらい見ておけばいいですか?

四足ロボットは Unitree Go2 が Air 528,000円、Pro 678,000円、X 998,000円(税別・2025年10月6日改定)。オペレーター同行のデモは Go2 Pro で1日 150,000円(税別)です。ドローンの点検・測量の役務は、対象・面積・精度要求で変わるため要見積です。

自治体でも補助金は使えますか?

ここで挙げている制度は中小企業向けで、自治体そのものは対象外のことが多いです。地域の事業者に委託する場合は、その事業者の設備投資として中小企業省力化投資補助金(補助率1/2以下・カタログ登録製品・中古品は対象外)が候補になります。レンタルは対象外が多く、採択は保証されません。

出典

  1. 内閣府「人工知能基本計画」(令和8年7月14日 閣議決定)https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_plan/aiplan_20260714.pdf
  2. 国土交通省「建設分野におけるフィジカルAI戦略(中間とりまとめ)概要」(令和8年9月)https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/002020332.pdf
  3. 内閣官房「AIロボティクス戦略」(令和8年3月26日決定)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ai_robo/dai3/shiryo1.pdf
  4. 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)https://shoryokuka.smrj.go.jp/catalog/about/
  5. Lister「フィジカルAI導入・実証トレンドレポート2026」(2026年7月)https://lister.jp/physical-ai/chaos-map/use-case/report/
  6. 関東経済産業局「ロボット導入施策パッケージ 2026年5月時点版」https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/iot_robot/robot/data/robot_package.pdf
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監修:齊木祐介ASI株式会社 代表取締役

AI・ロボティクスの導入支援、補助金・助成金の活用支援、専門メディアの運営など複数事業を統括。四足・ヒューマノイド・ドローンの供給元との実取引と実見積にもとづき、本サイトの実現度(◎○△×)・費用・手配可否を監修しています。(運営:ASI株式会社運営者情報