建設は、国が名指しで方針を出した分野です。国土交通省は2026年9月4日に「建設分野におけるフィジカルAI戦略(中間とりまとめ)」で重点8分野を示しました[1]。ただし現場で確実に効くのは測量・記録・点検で、汎用の施工自動化はまだ人と重機の領域です。
ドローンによる測量・3D出来形計測と空撮の進捗記録は◎実用、四足ロボットによる危険箇所・狭所の遠隔点検は○条件付き。墨出し・資材搬送は△で対象と現場を限定した実証、汎用の施工自動化は×です。重点8分野のうち民間の現場が今日から手を付けられるのは、構造物点検・巡視・災害調査の系統だと考えてください。
能力DBで建設の作業に◎(実用)が付くのは2つ、どちらもドローンです。測量・3D出来形計測と空撮による進捗記録・共有。一品生産の現場でも、この2つは工種に依存しません。測る・撮るは、掘っていようが組んでいようが同じ動作で成立します。人が法面や足場を登らずに済み、出来形の手戻りも減ります。
四足ロボットによる危険箇所・狭所の遠隔点検。能力DBの条件欄は「通信・回収手段の確保」の一行ですが、建設の現場ではここまで具体化が要ります。
国内595件の導入・実証事例の分析では、四足歩行ロボットの実運用比率は11.1%でした[6]。持ち込めば動くものではなく、現場ごとの条件設計が成否を分ける数字です。
○は「条件を満たせば動く」であって「だいたい動く」ではありません。建設は現場ごとに条件が変わるため、1現場で成立した構成が次で通るとは限りません。横展開は条件の一致度で判断してください。
「建てる作業をロボットに」という提案は、いまはお断りする側の話です。理由は国土交通省自身の整理が正確で、建設現場は「一品受注、一品生産、多種多様な工程・工種」という特性を持ち、「一品生産・非定型・高不確実性」で、気候や天候に大きく左右される[2]。同じ作業が二度と来ない現場では、学習も治具も効きません。Listerのレポートも、実装が先行するのは「定型・反復・閉鎖環境の業務」だと結論づけています[6]。建設はその対極です。
実証事例はありますが、「どの現場でも使える製品」として買える段階ではありません。投資計画に入れるなら実証への参加という位置づけで。
重点8分野に入っていること=いま買える製品があること、ではありません。国土交通省は「今後設置予定のコンソーシアムにおいて各分野の進め方を具体的に検討」と書いています[1]。方針と製品の間には、まだ距離があります。
能力DBの建設の全行です。◎実用/○条件付き可/△研究段階/×今はできない。
| 作業 | 機種 | 実現度 | 条件 | 手配 |
|---|---|---|---|---|
| 測量・3D出来形計測 | 産業用ドローン | ◎ 実用 | 飛行許可・基準点設定 | 弊社手配 |
| 空撮による進捗記録・共有 | ドローン + カメラ | ◎ 実用 | 天候待ち・立入管理 | 開拓中 |
| 危険箇所・狭所の遠隔点検 | 四足 / Unitree Go2 | ○ 条件付 | 通信・回収手段の確保 | 開拓中 |
| 墨出し・資材搬送 | 専用ロボット | △ 研究段階 | 対象・現場を限定して実証 | 開拓中 |
| 汎用の施工自動化 | ― | × 不可 | 今は人と重機の領域 | ― |
全業種を横断した一覧はできる/できない一覧へ。近い条件の現場は警備・点検と自治体・インフラもご覧ください。
国は令和8年2月18日にWGを設置し、8月26日に中間とりまとめを策定、9月4日に公表しました[1]。左が国の分野、右がいまの現場の実力です。
| 区分 | 重点分野 | 作業例 | いまの実現度 |
|---|---|---|---|
| 土木施工 | (1) 機械施工 | 掘削・運搬・敷き均し・積込み等 | × 汎用は不可 |
| 土木施工 | (2) 人力技能作業 | 鉄筋の配筋・結束・圧接、型枠の組立・解体等 | △ 研究段階 |
| 土木施工 | (3) 現場内小運搬 | 現場内の資材運搬 | △ 限定実証 |
| 維持管理 | (4) 構造物点検 | 道路・河川等の構造物 | ◎ ドローンで実用 |
| 維持管理 | (5) 巡視・点検 | 河川巡視・道路巡視等 | ◎/○ 狭所は条件付 |
| 維持管理 | (6) 除草、除雪、清掃 | 車両系機械・人力作業 | × 専用重機の領域 |
| 災害対応 | (7) 災害調査 | 広域調査・詳細調査 | ○ 通信・天候に依存 |
| 災害対応 | (8) 災害復旧 | 土砂撤去・整地・運搬・軽作業・道路啓開等 | × 人と重機の領域 |
中間とりまとめは、フィジカルAIを「導入自体を目的化せず、現場課題を起点に手段として活用する」ものと位置づけ、「大企業だけでなく、建設業の大部分を占める中小企業も含め、あらゆる規模の現場への普及を見据える」と書いています[1][2]。目的は導入ではなく危険作業と手待ちを減らすこと、対象は大手だけではないこと。社内説明の軸はこの2行で足ります。政府全体でも「AIロボティクス戦略」の18分野に建設・土木、建築、インフラ保守が入り[3]、人工知能基本計画は「フィジカルAIにAI戦略の重点を置く」としています[4]。
Survey / Inspection
建設の本命。測量・3D出来形計測・空撮の進捗記録が実用段階です。
Unitree Go2
人が入ると危険な狭所・坑内の遠隔点検に。階段も昇降できます。
ACSL SOTEN
「国産機であること」が要件になる案件向けの選択肢です。
1つめは四足のエディションです。Unitree Go2はAirとProで二次開発(プログラム制御)ができません。決まったルートを自動巡回させる、自社システムから制御する、といった使い方ならX以上が必要です。取り違えると納品後に作り直しになります。
2つめは、発注仕様が本当に「非中国製」を求めているかです。公共工事の元請や自治体案件では、国産機であること自体が要件を満たす根拠になります。ACSL SOTENはその説明がしやすい一方、本体価格は民生機より上がります。要件が「非中国製」なのか「特定の機能」なのかを切り分けると、選択肢と費用が変わります。比較は機種から探すと選び方へ。
価格表を確認できているものだけを実額で載せます。ドローンの測量・点検は機体と面積と精度要求で変わるため要見積です。
| 機種・形態 | 価格(税別) | 備考 |
|---|---|---|
| Unitree Go2 Air(販売) | 528,000円 | 二次開発は不可 |
| Unitree Go2 Pro(販売) | 678,000円 | 二次開発は不可 |
| Unitree Go2 X(販売) | 998,000円 | X以上が二次開発に対応 |
| Go2 Pro オペレーター同行デモ | 150,000円〜 / 日 | 1現場での検証用。構成により変動 |
| ドローン測量・点検の役務 | 要見積 | 機体・面積・精度要求で変動 |
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は補助率1/2以下。上限は従業員5名以下で200万円(賃上げ達成で300万円)、6〜20名で500万円(同750万円)、21名以上で1,000万円(同1,500万円)[5]。カタログ登録製品を販売事業者と共同で導入することが条件、中古品は対象外、3年間で労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画が必要です。ほかに新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、デジタル化・AI導入補助金も候補です[5]。
建設が工場や倉庫と違うのは、一品生産・天候・第三者の立入管理・飛行許可の4点。これを織り込んだ順序で進めます。
危険作業、手待ち、記録漏れ、出来形の手戻り。減らしたいものを1つに絞ります[1]。
目的は導入ではない一品生産なので「どの現場の、どの工種で、いつ」まで落とさないと検証になりません。天候の予備日も工程に入れます。
3点を先に決める許可・承認の要否、立入管理、朝礼での周知、電線やクレーンとの離隔、中止基準。段取りが取れない現場では飛べません。
安全と法令が先通信・路面・立入・天候の4項目を条件書にして引き継ぎます。
条件の一致度で判断関東経済産業局も「中堅・中小企業が独力でロボットを導入することは困難であり、支援機関の皆様の助けが必要」とし、事前検討から運用・改善・保守までの基本フローを示しています[5]。全体像は導入ガイドへ。
建設現場でフィジカルAIは何に使えますか?
いまは測る・撮る・見回るの3つです。ドローンの測量・3D出来形計測と空撮の進捗記録は実用(◎)、四足ロボットによる危険箇所・狭所の遠隔点検は条件付き可(○)。国交省の重点8分野でも、構造物点検と巡視・点検が維持管理の柱です。
国土交通省の重点8分野とは何ですか?
機械施工、人力技能作業、現場内小運搬、構造物点検、巡視・点検、除草・除雪・清掃、災害調査、災害復旧の8分野です。令和8年8月26日策定・9月4日公表。土木施工・維持管理・災害対応の3区分に整理されています。
施工そのものを自動化できますか?
汎用の施工自動化はいまはできません。墨出しや資材搬送は対象と現場を限定した実証段階です。国交省も建設現場を「一品生産・非定型・高不確実性」と整理しており、同じ作業が二度と来ないことがそのまま壁になっています。
中小の建設会社でも関係がありますか?
あります。戦略は「大企業だけでなく、建設業の大部分を占める中小企業も含め、あらゆる規模の現場への普及を見据える」と明記しています。一方で関東経済産業局は「中堅・中小企業が独力でロボットを導入することは困難」とも書いており、外部と組む前提が現実的です。
ドローンを飛ばすのに許可は要りますか?
現場の場所と飛ばし方によります。実務では許可・承認の要否に加え、第三者の立入管理、朝礼での周知、電線やクレーンとの離隔、中止基準までを段取りに含めます。悪天候・強風下では安全のため飛行しません。
四足ロボットはいくらで試せますか?
オペレーター同行のデモは Unitree Go2 Pro で1日 150,000円〜(税別・2026年6〜7月時点の下限の目安。構成により変動)。購入は Go2 Air 528,000円、Pro 678,000円、X 998,000円(税別・2025年10月6日改定)。AirとProは二次開発ができず、自社システムから制御するならX以上が要ります。
建設会社が使える補助金はありますか?
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は補助率1/2以下、上限は従業員6〜20名で500万円(賃上げ達成で750万円)、21名以上で1,000万円(同1,500万円)。カタログ登録製品を販売事業者と共同で導入することが条件、中古品は対象外、3年で労働生産性年平均3.0%以上の計画が要ります。レンタルは対象外が多く、採択は保証されません。
点検・測量したい対象、現場の規模、頻度をお聞きすれば、ドローンや四足で何ができるか、許可の要否や費用まで含めてご案内します。相談は無料です。