Logistics / Warehouse

物流・倉庫の
フィジカルAI導入

倉庫は、いまフィジカルAIがもっとも実運用に届いている現場です。国内595件の事例分析で、物流・倉庫の実運用比率は71.4%、搬送業務は73.3%[2]。一方で多品種の不定形ピッキングは研究段階のまま。分けて書きます。

搬送は実運用段階 実額と補助金の上限 できない作業も明記
まず結論

倉庫のフィジカルAIは「運ぶ」が本命です。

平坦な床の水平搬送(AMR)は◎実用、定型・単品種のピッキングと四足ロボットの棚卸し巡回は○条件付き。逆に多品種・不定形をランダムに掴み分ける汎用ピッキングは△研究段階で、人型による重量物の単独運搬も展示向きです。

01 / Working now

倉庫でいま実際に動いている作業

国内595件の導入・実証事例のうち実運用に届いたのは308件(51.8%)。そのなかで物流・倉庫は実運用比率71.4%と、製造67.0%・小売59.4%を上回ります。業務で切ると搬送73.3%(90件)、形態で切ると無人フォークリフト83.3%[2]。「定型・反復・閉鎖環境の業務が実装を先行する」という結論[2]に、倉庫はほぼ合致します。国の「AIロボティクス戦略」も18分野の一つに物流(倉庫・輸配送)を挙げています[1]。

能力DBでも、倉庫の作業で◎(実用)が付くのは倉庫内の水平搬送ただ一つ。実運用に届いた倉庫の共通点は、床が平坦で段差がないこと、搬送の起点と終点が固定され1日の往復回数が読めること、通信の死角がなく充電拠点を動線上に置けることの3点です。

02 / Conditional

条件付きでできる作業(○)

定型・単品種のピッキング

条件は「形状固定」の一語に集約されます。品目を1〜数種に絞ること、寸法と重量が可搬重量の内側に収まること、供給側で治具が姿勢を整えていること。ピッキングの実運用比率82.9%(41件)[2]は高い数字ですが、母集団の中心はこの絞り込んだピッキングで、次章の汎用ピッキングとは別物です。

在庫棚卸し・巡回点検

四足ロボットで可能。通路幅、棚番地とタグの整備、遠隔監視の体制が前提です。なお設備点検は事例89件に対し実運用比率37.1%[2]と、検討は多いが定着が少ない領域。「点検を任せる」より「記録を取る」から入ると失敗が減ります。

○は「条件を満たせば動く」であって「だいたい動く」ではありません。条件を満たす工事や治具の費用まで含めて判断してください。

03 / Not yet

まだできない・期待してはいけない作業

多品種・不定形のピッキング(△)

倉庫の自動化でいちばん期待され、いちばん裏切られるのがここです。理由は単純で、初めて見る物体の「どこを掴めば落ちないか」を推定する汎用解が、まだ存在しないから。袋物は形が変わり、薄物は吸着が抜け、ケーブルや布は輪郭が取れません。品目を絞れば○、絞らなければ△のまま。ここが投資判断の分かれ目です。

人型ロボットによる重量物の単独運搬(△)

二足歩行で荷を運ぶ映像は増えましたが、実態は展示・PR向きです。形態別の実運用比率はヒューマノイド16.7%、四足歩行11.1%[2]。「歩ける」ことと「毎日の業務で稼げる」ことは別だと数字が示しています。

04 / Matrix

作業×実現度の一覧

能力DBの物流・倉庫の全5行です。◎実用/○条件付き可/△研究段階/×今はできない。

作業機種実現度条件手配
倉庫内の水平搬送 AMR / 自律搬送ロボット ◎ 実用 平坦床・段差× 開拓中
ピッキング(定型・単品種) 協働アーム ○ 条件付き可 形状固定 弊社手配
在庫棚卸し・巡回点検 四足 / Unitree Go2 ○ 条件付き可 Go2 Pro 15万円〜/日・オペ同行 弊社手配
ピッキング(多品種・不定形) 協働アーム+AI △ 研究段階 汎用把持は未成熟 開拓中
重量物の運搬を人型で(展示・実証向け) 大型二足 / Unitree H1 △ 研究段階 展示向き・H1は2026-07時点でレンタル供給なし 開拓中
フィジャーズ能力DB(5行・2026-09-15時点)をそのまま表示しています。手配=弊社手配/開拓中(供給線を開拓中)/―(該当なし)。横断一覧はできる/できない一覧へ。
05 / Categories

倉庫に向いている機種

詳細はUnitree Go2Unitree H1、選ぶ順序は選び方に。

06 / Cost

費用の目安と使える補助金

機種・形態価格(税別)備考
Unitree Go2 Air(販売)528,000円二次開発は不可
Unitree Go2 Pro(販売)678,000円二次開発は不可
Unitree Go2 X(販売)998,000円X以上が二次開発に対応
Go2 Pro オペレーター同行150,000円〜 / 日試験導入の検証用。構成により変動
搬送AMR・協働アーム要見積台数・経路・連携範囲で変動
販売は2025年10月6日改定の価格表、レンタルは2026年6〜7月時点の供給元提示額にもとづく下限の目安です。構成・期間・地域により変わります。在庫は非公開・都度確認。

倉庫管理システムと連携させて自動巡回させたいなら、Air・Proでは二次開発ができないため、X以上を前提に見積もる必要があります。ここを取り違えると「買ったのに繋がらない」が起きます。

中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は補助率1/2以下、従業員21名以上の倉庫なら上限1,000万円(賃上げ達成で1,500万円)[3]。カタログ登録製品を販売事業者と共同で導入することが条件で、中古品は対象外です。レンタルは対象外のことが多く、採択は保証されません。詳細は費用相場補助金で導入へ。

07 / How to start

倉庫での導入の進め方

関東経済産業局の施策パッケージは「中堅・中小企業が独力でロボットを導入することは困難」と明記し、事前検討から要件定義、機器提案、導入、運用改善までの6段階を示しています[4]。倉庫では、その最初の段階で測る数字が決まっています。

  • 通路幅:最狭部と、すれ違いが起きる箇所
  • :段差・スロープ・ドックレベラー・排水溝の高さ
  • :番地の付番ルールとタグ・ラベルの整備状況
  • 動線の交差:フォークリフトと人が交わる回数と時間帯
  • 通信と電源:Wi-Fiの死角、充電拠点を置ける位置

数字が揃えば、AMR何台で何往復を置き換えられるかが机上で出ます。そのうえでいきなり買わず、まずレンタルで現場適合を確かめるのが安全です。全体像は導入ガイド、検証の型はPoC、つまずき方は失敗パターン、近い業種は製造小売に。

08 / FAQ

よくある質問

倉庫の搬送はロボットに任せられますか?

平坦な床の水平搬送なら実用段階です。国内595件の事例分析でも、物流・倉庫の実運用比率71.4%、搬送業務73.3%(90件)と実装が進んでいます。段差・スロープのある動線は対象外です。

ピッキングも自動化できますか?

定型・単品種なら協働アームで条件付き可能です。品目を1〜数種に絞り、重量が可搬重量の内側に収まり、供給側の姿勢が治具で整っていることが前提。多品種をランダムに掴み分ける汎用ピッキングは研究段階です。

人型ロボットに重量物を運ばせられますか?

今はできません。実態は展示・PR向きで、形態別の実運用比率もヒューマノイド16.7%・四足歩行11.1%と低い水準です。水平搬送はAMR、把持は協働アームという分担が現実的です。

四足ロボットは買うといくらですか?

2025年10月6日改定の価格表で、Go2 Air 528,000円、Go2 Pro 678,000円、Go2 X 998,000円(税別)です。Air・Proは二次開発ができずX以上が可能なため、倉庫システムと連携させるならX以上で見積もります。

搬送AMRの費用はいくらですか?

要見積です。台数・経路長・充電方式・既存システムとの連携範囲で変わるため、根拠のない目安を一人歩きさせません。

補助金は使えますか?

中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は補助率1/2以下、従業員21名以上で上限1,000万円(賃上げ達成で1,500万円)。3年間で労働生産性を年平均3.0%以上向上させる計画が要ります。レンタルは対象外が多く、採択は保証されません。

出典

  1. 内閣官房「AIロボティクス戦略」(令和8年3月26日決定)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ai_robo/dai3/shiryo1.pdf
  2. Lister「フィジカルAI導入・実証トレンドレポート2026」(2026年7月)https://lister.jp/physical-ai/chaos-map/use-case/report/
  3. 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)https://shoryokuka.smrj.go.jp/catalog/about/
  4. 関東経済産業局「ロボット導入施策パッケージ 2026年5月時点版」https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/iot_robot/robot/data/robot_package.pdf
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監修:齊木祐介ASI株式会社 代表取締役

AI・ロボティクスの導入支援、補助金・助成金の活用支援、専門メディアの運営など複数事業を統括。四足・ヒューマノイド・ドローンの供給元との実取引と実見積にもとづき、本サイトの実現度(◎○△×)・費用・手配可否を監修しています。(運営:ASI株式会社運営者情報